強さを求めて

何かに一生懸命になっている人の姿はそれが何であれかっこいいらしい。ほーん。一生懸命腰を振っている人もかっこいいんだ。間抜け面に見えないんだ。欲望のままに運動をしているその様はかっこいいものとして皆受け止めてくれるのか。ふーん。てへ

スマブラスマブラカービィが弱いゲーム。幾度目かの神の仲裁によりそこまで弱くはなくなった。
スマブラスマブラ。性格が出るゲーム。戦って勝つことよりも勝利そのものが欲しい人は、強さを求める人とは分かり合えない。
スマブラスマブラ。思い出の詰まった懐かしいゲーム。神様はキリギリス。

初めてゲームを触ったのはスクールバスの中だった。近所のおてんばな女の子がゲームボーイのマリオをもってきて一人でやっていた。何をしてるの?と尋ねると貸してくれて少しだけやらせてもらえた。4回やって4回とも最初のクリボーに当たって死んだ。操作精度とかコントロールの方法がわからなかったとかではなく、初見殺しに4回も引っかかったのだ。前に進むとクリボーが出てくるのだが、そのクリボーが出てくる場所がちょうど頭上にブロックが出現するタイミングと同じだったのだ。ブロックが邪魔でジャンプはできず、一度引こうにもBダッシュの慣性ですぐには止まれない。迫りくるクリボー、止まれないマリオ。反転に成功したその瞬間、クリボーがマリオと当たりマリオは死亡。Life×02.冷静に考えて、クリボーが屋根ブロックのある所から出てきてくれるまで待てばいいのだが6歳の私はそんな忍耐力をもってはいなかった。GAME START!は徒競走のよーいドンと同じ意味だったし、早く走ることしか知らなかった私は愚直にクリボーに向かって突進し続けた。4回しか挑戦しなかったのは、そこまで見ていた持ち主の子がしびれを切らしてあたしがやる!とゲーム機を取り上げお手本を見せてくれたからだ。しかしお手本を見せてくれるということはすなわちゲームが続くことであり、結局5度目のチャンスは訪れなかった。
あれから13年。友達の家でたまにやるスマブラくらいでしかコントローラを握れなかった私はとうとう大学受験後に初めての自分のゲーム、DSLiteカービィのスパデラを購入。その日の晩は眠らなかった。大学に入ってからも抑圧からの反動で様々なゲームを購入し、SwitchとPS4を1台ずつ、ジャンクのPS2を2つ(うち片方は修理済み)、ジャンクのPS3を2つ(片方は動作不良なしもう片方は未修理)所持するに至った。幸い中古のゲームソフトは大変安く、3000円ほどで12本のゲームが手に入った。ラチェットアンドクランクやFFXなどの往年のゲームからOctopath Travelerまで、はては沙耶の唄天使の二挺拳銃などの㍶ゲームにも手を出し始めた。自転車で15分で行ける秋葉原は自分の庭と化し、ゲームショップやホビー店のジャンクボックスは宝の山だった。いろいろなゲームを修理したPS2で遊んでいたが、スイッチに手を出した大学2年の春が決定的だった。ゼル伝スマブラに生活は毒され成績は目に見えて落ちた。後悔は一切していないが、とりあえず親がゲームを買ってくれなかった理由ががわかった。一番やりこんでいたスマブラはすくなくとも寮の友だちと1000時間以上やったし得た学びも大変大きかった。スマブラから得たもので一番大きかったものは、自分が感情のコントロールが下手糞だということに気付かされたことだ。

飛び道具で永遠と牽制され、最後に雑な大技で撃墜されると相手とリアルファイトを始めたくなるくらい頭に血が上ったし先輩後輩関係なく暴言を吐きまくった。壁は殴るし無言で相手に勝負を挑み続ける戦闘狂になっていた。判定負けをするたびに抗議の声を上げたしひたすら待つ戦法をとる先輩に対してはどうせ人生も同じように何かを待ち続けてんだろ負け犬がと煽り散らした(試合は負けた)。平気で学歴マウントをとったし人格否定は日常茶飯事だった。勘違いしてほしくないのは、スマブラで負けること自体よりも闘えないことやずるい戦法に対して腹を立て、場外乱闘を繰り広げたことだ。負けは負け。自分が弱い。だが闘おうとしない人やせこい戦い方をする人は許せなかった。寮の壁を殴って穴をあけるまで感情をコントロールすることを覚えなかった。ゲームで負けることがこんなにも腹立たしいと思わなかったしこれほど自分が短気だとも思っていなかった。
対戦ゲームは性格が出るという。面と向かって相手と拳で闘いたい人は近距離キャラを使うし、パワーで相手を叩き潰したい人は重量級を。やられる相手を見て楽しむ人は飛び道具をたくさん持ったキャラクターを使う。キャラランクに基づいてキャラを選ぶ人は闘って勝ちたい人だし、弱くても特定のキャラを使っている人はそのキャラを使うこと自体に喜びを感じている。私はカービィを選んだ。徒手空拳で闘うファイターであり、70キャラ以上いる中で最弱キャラといわれていた。つまり私は素手で相手と殴り合うのが好きなキャラ愛の強い人だったのだ。そんな私はゲームが下手だったため相手に突っ込むことしかしていなかった。15年前のスクールバスと同じ。近距離で闘いたいから相手に近づく。そして殴る。相手はそれを理解しているので攻撃をかわす。私は殴り返されたりビーム攻撃を受けたりなど手痛い反撃を食らい負ける。FPSでよく言われている言葉に「引くことを覚えろカス」があるが私の場合は「殴りかかる以外のことをやれよゴミ」だ。負けた時の相手への対応も同じ。相手は確かにずるい戦法をつかってくる性格終わってるゴミクズかもしれないが俺はそのゴミクズに負けた。理由は動きが単調だったから。一度身を引いて冷静になって相手を観察することを心がけよう。負けるたびにそう思うようになってから物凄いスピードで上達した。寮で一番強い先輩と互角に渡り合えるようになったし、ゲームを触り始めた時は雲の上の存在だと思っていた同期はツイッターを眺めながらボコれるようになった。自分が強くなることは楽しかったし快感でもあったが、寮の中でしか対戦していなかったため井の中の蛙が見事に生成された。スマブラサークルに入るとまたまたボコられた。けれど今回は強くなりたいと思っていたから貪欲に相手を見るようになった。負けても相手に対戦を申し込み続けるのは自分のいいところだと思ったため対戦回数だけは積み重ね、負けるたびに相手の動きを記憶しパターンを見出そうとした。いまだに相手にキレることもあるが仕方がない。ゲームを始めてまだ1年だ。相手には申し訳ないが今まで一切ゲームを触ってこなかった人が、ほかの分野でひたすら勝ち続けてきた人が無様に負けているんだ。大目に見てやってくれ。うむ。これを免罪符に今日もイライラを積み重ねていこう。